業界未経験の私が技術者になった理由
11年前に結婚して仕事を辞め、ほどなく妊娠・出産したため、ここ10年以上、ずっと専業主婦をしていました。
しかし、1年ほど前、夫の会社が業績不振に陥り、夫も早期退職。
夫は転職したものの、職場でひどいパワハラに遭い、勤めて2ヶ月もたたない間に退職することになりました。
勤めていた2ヶ月の間に10kgもやせてしまった夫。
このまま、夫の収入だけに頼っていてはいけない、と思い、私もパートを探すことにしました。
幸い、一番下のこどもが小学生になったばかりだったので、働き始めるのには好都合でした。
とはいえ、小学校1年生の帰りは早いので、パートで仕事を探すことに。
できれば、近所で時給が高く、午前中だけの仕事。こどもの都合でお休みがとれる所がいいと思っていました。
バイト情報誌を読んでいると、ちょうど近所で時給1200円の仕事が。
小さい工場の検査員の仕事で、「大卒以上、1日4時間」と書いてありました。
面接に行くと、社長が出迎えてくれました。
「これからは女性の力が必要だ」というのが持論の社長。
介護や育児をしながら仕事ができるよう、いろいろと融通を利かせてくれるという話に。
「あなたが良かった来て」
と言われたので、1日4時間のパートとして働くことにしました。
仕事は「検査員」じゃなかったの?
もともとは検査員として採用されたはずの私。
募集の条件通り、最初は検査室に入り、工場で加工した製品がちゃんと図面通りにできているか、チェックする仕事をしていました。
機械の加工図面すら見たことがなかったので、先輩について見よう見まねで検査をしていました。
ところが、入社して2ヶ月くらいがたった頃。
なぜか社長に呼び出されて「工場で製品を作るように」と言われました。
工場と言っても、生産ラインの単調作業ではありません。
その工場は、小さいながらも大企業と取引があり、大企業の工事用ライン用の部品や、研究所の試作品などを作っていました。
なので、すべて加工品は1点もの。
手動の旋盤やフライス、プログラムを使ったマシニングセンタ、ワイヤー放電といった機械を使って、一点一点製作しているのです。
つまり、日本が誇る職人芸の世界。
その、ベテランの職人さんについて工作機械を使えるようになれ、というのです。
職人さんは70歳のおじいさんですが、親切にひとつひとつ教えてくれました。
他のパートの女性も、同じように機械加工に回されたので、お互い愚痴り合いながらもがんばりました。
寡黙な男性の職人さんが多い職場ですので、イジメや陰口を言われるようなこともなく、人間関係では悩むことはありませんでした。
ただ、社長のムチャぶりがツラかったです。
パートなので、残業はほぼありませんでした。
社長としては、もっとたくさん働いて欲しかったようです。
まったくの未経験の仕事ですが、1/1000ミリ単位で図面通りの製品を作ることができたときは、とてもやりがいを感じました。
良かったこと、悪かったこと
工業高校を出た訳でもなく、まったく未経験だった工場の仕事。
図面の読み方すら分からなかったのですが、本を買ってくれたり、研修に行かせてくれたり。
小さい個人経営の工場でありながら、きちんと教育をしてくれました。
日本が誇る町工場の職人芸を間近に見ることができ、自分もその一部を教えてもらえたこと。
なかなかそんな体験をできる女性はいないと思うので、働いてみて良かったと思います。
ただ、未経験のパート女性を、いきなり現場(しかも職人技が必要な部署)に回すという、社長のムチャぶりに振り回されるのが大変でした。
小さな工場なので、工程管理などもいいかげんで、取引先に迷惑をかけてお叱りを受けるのもつらかったです。
これからお仕事を探す人へ
まったくの未経験からいきなり機械加工をすることになりましたが、教えてもらいながらなんとか仕事をすることができました。(もちろん、熟練の職人さんたちのように、短時間で精度が高い物は作れませんが)
「未経験だからムリかも」と思わず、興味があることには飛び込んでみると、新しい世界が開けるかもしれません。
私のように、仕事を選んだ理由が「時給の良さ」や「子育てと両立できる時間」でも、なんとかなるものです。
アルバイト体験談投稿者データ
性別:女性
年齢:45歳
業種:金属加工・製造業
職種:技術者
雇用形態:アルバイト・パート
給料:時給1200円